障害福祉部ニュース (障害福祉制度・施策関連情報) 2008年12月11日 22(通算212号) 発行:全国社会福祉協議会・障害福祉部 〒100-8980 東京都千代田区霞が関3-3-2 新霞が関ビル内 TEL:03-3581-6502  FAX:03-3581-2428 e-mail:z-shogai@shakyo.or.jp 1.第48回社会保障審議会障害者部会の開催  平成20年12月10日、第48回社会保障審議会障害者部会が開催され、これまでの部会での 議論をとりまとめた『社会保障審議会 障害者部会 報告〜障害者自立支援法施行後3年の 見直しについて〜(案)』をもとにとりまとめに向けた議論が進められた。 報告案の概要 (見直しに当たっての視点)  冒頭、厚生労働省(事務局)より、報告案の説明があり、障害者自立支援法の見直しに 当たって、@当事者中心に考えるべき、A障害者の自立を更に支援していく、B現場の実 態を踏まえて見直していく、C広く国民の理解を得ながら進めていくという4つの視点が 示された。このような視点から見直しを行った障害者部会での議論をとりまとめた報告案 では、この報告に基づき施行後3年の見直しに係る関係法律・制度の改正や、平成21年4 月の障害福祉サービスの費用の額(報酬)の改定等に向けて、厚生労働省において具体的 な制度改正について検討し、できる限り実現していくべきであるということが提示された。 また、今回の部会の中で、一定の結論を得るまでには至らなかった事項については、今後、 厚生労働省等において、鋭意検討を継続していくべきであることが示された。 (ケアマネジメントの充実)  障害者が様々なサービスや地域資源等も活用しながら、地域で自立して安心して暮らし ていけるようケアマネジメントの充実を図る観点から、サービス利用計画作成費の対象者 の拡大やモニタリングの実施、ケアマネジメント・モニタリングを実施する体制の強化な どが示された。中でも、ケアマネジメントに当たっての視点について、障害者自らの力で 自立した生活を送っていけるよう障害者自身の力を引き出していく(エンパワメント)と いう視点の必要性を強調し、「障害者が自らマネジメントできるようにしていく(セルフ マネジメント)という視点も必要である」という点が今回新たに追加された。 (ショートステイの充実)  障害者が地域において安心して暮らすことができるようショートステイの充実を図る観 点から、単独型のショートステイや日中と夜間に分けた利用形態などの論点に加え、「緊 急時においてショートステイを円滑に利用できるようにするため、運用面での改善につい ても検討すべきである」ということが今回新たに付け加えられた。 (所得保障)  障害者の生活の安定を図る観点から、「障害者の所得保障については、障害者の稼得能 力の低下を補い、あるいは障害があることによる特別な負担を軽減することなどにより、 障害者の生活の安定を図るものであり、障害者の自立した生活を支えていくために必要不 可欠なものである。その充実に向け、財源の確保も含めて、国において検討を深めていく べきである」ことが新たに示された。 (利用者負担)  利用者負担の在り方については、現行の利用者負担に関する賛否両論の意見を踏まえ、 「サービスの利用状況もみつつ、過度の負担となっていないか今後とも更に検討が必要と 考えられるが、制度施行後の現在の利用者負担の仕組みについては、費用を広く国民で分 かち合うという趣旨を踏まえつつ、障害者の負担能力に応じて負担を求めるよう、所得に 応じてきめ細やかな軽減措置が講じられてきていることについて、国民に明確になるよう にしていくことが必要と考えられる」ということが提示された。また、現行の特別対策等 による利用者負担の軽減措置は、平成21年4月以降についても、更に継続して実施すべき であるとし、利用者負担の軽減に当たって、「利用者負担を支払った後に手元に残る金額 や、心身障害者扶養共済給付金が収入認定の対象とされていることについて見直すべきと の意見や、現在の所得が低いにもかかわらず一定の資産がある場合には高い負担を求めて いることについて見直すべきとの意見があり、検討が必要と考えられる」と新たに示され た。  その後、各委員との意見交換が行われた。各委員から出された主な意見は下記のとおり。  次回は12月15日に開催され、今回の議論を踏まえ、報告案をさらに修正し、障害者部会 としての最終的な報告がとりまとめられる予定。なお、次回の審議の中で、報告がまとま らなかった場合、予備日として12月17日が予定されている。  -------------------------------------------------------------------------- 第48回社会保障審議会障害者部会(12月10日)における各委員からの主な意見   報告案に基づく全体的な議論   【はじめに】 ・P.2の「はじめに(本報告について)」のところで「施行後3年の見直し の一定期間(例えば3年)後に改めて制度全般について見直しを加えて必 要な措置を講ずること」と示されているが新体系への移行が平成24年3月 に終了すること、自立支援法の附則に「この法律の施行後5年を経過した 場合において検討を加えて必要な措置を講ずるものとする」と規定されて いることなどをふまえ「施行後3年の見直しの3年後」と、その後の見直 し時期を明確にする文言に修正していただきたい。 ・P.3のはじめに(見直しに当たっての視点)」のところの「現場の実態を 踏まえて見直していく視点」について「利用者に対するサービス提供」と 「事業者の経営基盤の安定」とは一体のものであり、人材確保を含めた事 業者の経営基盤の安定がなければ利用者に対する安定したサービス提供も 実現しない。「サービス提供に携わる良質な人材を確保できるための事業 者の経営基盤の安定」という視点を文言の中に含めていただきたい。 ・P.3の「はじめに(見直しに当たっての視点)」のところの第四の視点で ある「国民の理解をどのように図っていくか」が重要である。地域での生 活や就労支援についても地域や企業の理解がないと進まない。障害者自立 支援法の枠を超えた対応をお願いしたい。 ・第一から第四の視点について、知的障害の人が社会に出て必要な支援を選 択していくことは現実的に難しいこともあると思う。社会の秩序の中でど う生きていくかを教えていくことが重要だと思う。その視点が含まれてい ないのではないか。   【(T)相談支援】   ((1)地域における相談支援体制) ・P.4の(相談支援を担う人材の質の向上)について「人材の確保」の文言 を加えてほしい。 ・P.5の(相談支援を担う人材の質の向上)のところの「身体障害者相談員・ 知的障害者相談員による相談援助の活用」について、精神保健福祉関係者 等の活用の視点も入れてほしい。 ・P.5の(総合的な相談支援を行う体制)について、地域生活移行などの支 援充実のためにしっかりと進めてほしい。その際にはサービス利用計画作 成費のように、利用者負担が発生しないような形で進めてほしい。   ((2)ケアマネジメントの在り方) ・P.7の(ケアマネジメント・モニタリングを実施する体制)のところの 「一定の中立性を確保できるようにしつつ」の文言について、精神障害者 の場合はその人のことをよく知っている人や支援に慣れた人が相談支援を 行うことが良い場合も多いので、充分勘案していただきたい。 ・P.7の「まず、人材の確保については」のところで、充実を図ることが必 要と書かれている一方で、相談支援専門員の実務経験の規定が非常に厳し く、これでは相談支援員を増やすことができない。障害当事者団体では実 質的に相談支援業務を行っており、そうしたところも認めるなど、相談支 援専門員の実務経験規定の緩和を図っていただきたい。 ・相談支援専門員の質の確保のために、資格制度の創設も含めて考えるべき ではないか。   【(U)地域における自立した生活のための支援】  (U−1 地域での生活の支援) ・P.10の(刑務所からの出所者等の支援)について「触法障害者の早期社会 復帰の観点から」の文言を入れてほしい。 ・P.10の(刑務所からの出所者等の支援)について「生活保護制度の活用」 の文言も入れていただきたい。 ・P.12の(緊急時等のサポートの充実)について、具体的な方法を考えるこ とが必要だと思う。グループホームやケアホーム、ショートステイ、訪問 系サービスの充実など、これらのことを一つにまとめたような仕組みを作 ることはできないか。このような仕組みを地域の中に作り、24時間体制で サポートできるようにすることが必要だと思う。 ・緊急時のサポートについて、病院や入所施設だけでなく、地域の拠点とな る機関で行うことが必要になると思う。またケアホームで対応できない障 害の重い人であっても、こうした拠点となる機関でサポートし、安心感を 与えていくことが必要だと思う。 ・緊急時においては、訪問系サービスを手厚くするなどの対応も必要。   (U−2 就労支援) ・P.15からの「就労継続支援の在り方」の中で、就労継続支援A型事業につ いての記載が出てこない。障害のある人が働く“雇用の場”を多く作って いくという視点からも、就労継続支援A型事業所の数を増やしていくこと が必要である。「就労継続支援A型事業への移行支援策の充実」の項目を 新たに追加し、労働法規を適用するための制度としての支援策の充実に加 え、雇用契約で認められている年次有給休暇と報酬算定との矛盾、雇用契 約と利用契約との二重契約の矛盾の解消、などの対応をお願いしたい。 ・P.18の「福祉施策と労働施策との関係」について、本格的な統合に向けた 具体的な検討をお願いしたい。   (V−3 所得保障) ・P.19の「所得保障」について、自立支援法の附帯決議の中にも「3年以内 にその結論を得ること」と示されており、障害者部会の報告書の中で所得 保障の充実に本気で向かっていくという姿勢を前面に出してほしい。「そ の実現に向けて具体的に検討すべき」との文言に変えてほしい。 ・「所得保障」について、障害者特有のものとして何か具体的に実現できる ものはないだろうか。その実現に向けて具体的に検討してほしい。 ・精神障害者は無年金の人が多く、無年金の人への対応について入れてほし い。  【(V)障害児支援】 ・P.24の(個別の支援計画の作成・活用)のところで「家族や後見人」の視 点も含めてほしい。   【(W)障害者の範囲】 ・P.27の「(1)障害者の定義」のところで発達障害当事者の立場より「適切 に判断することは困難」のところを「一定の定義がない」の文言に修正し ていただきたい。 ・P.28の(発達障害及び高次脳機能障害の障害者自立支援法における位置付 け)について、発達障害および高次脳機能障害は、現行の精神保健福祉法 の範囲において広く捉えると含まれる旨を明記していただきたい。 ・P.28の(難病を身体障害に含めること)について「慎重に検討すべき」で はなく「今後身体障害者の手帳制度の在り方を考える上で検討すべき」と の文言にしてほしい。   【(X)利用者負担】 ・P.30の(利用者負担についての原則的な考え方)のところで「利用者が事 業者にサービスに係る費用を支払うことにより、利用者の意見が事業者の サービスの向上に活かされやすくなる」と書かれているが、お金を払って いるからサービスについて文句が言える、といったことではないと思う。 例えば生活保護の人はサービスについて文句は言えないのか。 ・P.31の「他方、障害者の利用者負担の在り方について」の部分のところで、 前回の部会において私から「生存ニーズ」「文化的な生活のための支援」 の質的ニーズに分けて提案したが、これに対する報告書の記載では「負担 の上限額をきめ細かく軽減して設定」と量的ニーズにすり替わった提案と なっている。 ・P.31の「国民に明確になるようにしていくことが必要と考えられる」の部 分について「きめ細やかな軽減措置を行っていることについての国民への 理解」と誤解されるのではないか。 ・自立支援医療の認定の更新が1年ごとと短くなり、医師の診断書を取るた めの費用も大きな負担となっている。このことも検討事項として入れてほ しい。 ・利用者負担の軽減にあたっての資産要件について、撤廃する方向での検討 をお願いしたい。   【(Z)個別論点】   (Z−1 サービス体系)   ・P.34の「(1)サービス体系の在り方」の「昼夜分離を維持すべきとの意見」 のところについて精神障害の分野ではこれまで精神生活訓練施設において 昼夜一体で地域移行の役割を果たしてきたことも充分考慮していただきた い。   ・P.35の「(3)新体系への移行の促進」について、障害当事者の立場では職 住分離が前提になることに加え、利用できるサービスの選択肢が増えるこ とを期待している。また新体系に移行すると経営が苦しくなるのが実状で あり、事業者の経営基盤の安定も含め、新体系に移行すると報酬単価が高 くなるという見直しの方向性であることを文言として入れることはできな いか。   ・P.36の「(4)入所授産施設の新体系への移行」について、現行制度では障害 者支援施設の実施できる日中活動サービスの中に就労継続支援事業が含ま れていない。ここで示された文言では利用者が施設入所支援と併せて就労 継続支援事業が利用できることは分かるが、それを実施する障害者支援施 設の事業者が日中活動として就労継続支援事業を実施できるかどうかが明 確でない。 利用者・事業者のそれぞれの視点で明確に分かるように文言を修正すると ともに、必要な施行規則等の見直しを図っていただきたい。   ・P.36の「(5)その他のサービス体系の在り方」について、職住分離や一般 就労への移行に向けて機能分化し、さまざまなサービスを選択できる方向 で進めていただきたい。   ・職住分離を進めるにしても、このような職住分離ができない人のための昼 夜一体の施設があってもいいと思う。就労支援だけに焦点が当たり、生活 介護の議論がこの部会では少なかったのではないか。すべての障害のある 人のことを考えていくべき。   (Z−2 障害程度区分) ・P.38の「(1)障害程度区分の見直し」について、アメリカ合衆国のSISに 見られるような支援の程度による区分といった考え方はできないものか。 ・障害程度区分の問題の根本である障害者自立支援法第4条第4項の見直し をお願いしたい。 ・障害程度区分に支援の必要度やニーズ対応を入れても解決しないのではな いか。個別の支援計画に基づくケアマネジメントによって対応する方向性 を考えたほうがいいと思う。 ・P.39の「(3)国庫負担基準」について「中長期的な課題として国庫負担基 準の廃止を検討すべき」の文言に修正していただきたい。 ・P.40の「小規模な市町村において国庫負担基準の合算額を超えて支給した 場合の財政的な支援について検討すべきとの意見があった」について「意 見があった」ではなく「べき」と言い切った文言に修正していただきたい。 ・小さな市町村において国庫負担基準が実質的な上限となっている現実もあ るが、国庫負担基準とは国がどれくらい福祉を重視しているかを表してい るものではないか。その財源について、国を含めてみんなで頑張って確保 していくべき。 ・私は国庫負担基準が必要と考えているが、国庫負担基準を引き上げないと 問題の解決にはならないと思う。小規模な市町村において合算額を超えて 支給した場合には、国が1/2を負担するなどの仕組みを作る必要があると 思う。   (Z−3 地域生活支援事業) ・P.42の「福祉ホームについて、グループホーム・ケアホームへの転換も含 めて充実が図られるよう検討すべきとの意見があった」のところについて、 グループホーム・ケアホームへの転換以外の方法に加え、福祉ホーム自体 の充実も図ってほしい。精神障害者の福祉ホームについては財政的に非常 に厳しい実状がある。 ・P.42の福祉ホームについて「意見があった」ではなく「充実が図られるよ う検討すべき」と言い切った文言にしてほしい。 ・P.42の(その他)のところで「通学や通勤時の移動について一人で移動で きるようになるための一定期間訓練」と示されているが、労働施策で行わ れている有期限の支援ではなく、働き続けている間でずっと必要に応じた 排泄支援等の支援を受けられるものについて、福祉施策と労働施策との連 携の中で打ち出していただきたい。 ・「通勤時の支援」について、本来は障害者権利条約の企業等における合理 的配慮のところで議論すべき問題なのでないか。障害者権利条約との整合 性の問題を先送りにしてきた結果として、このような意見が出てきている のではないか。 ・P.42の(その他)のところについて、通勤だけでなく、通学時の移動につ いても教育施策ときちんと協議して支援策を打ち出していただきたい。 また在宅就労障害者に対する支援策についての福祉施策と労働施策との連 携をお願いしたい。   (Z−7 その他) ・P.49の(介護保険制度との関係)について、私の意見としては介護保険と 障害者施策を統合しユニバーサルな仕組みを考えていくべきだと思う。自 立支援法の見直しだけで5年後・10年後は大丈夫なのか。財源だけでなく 障害者福祉の世界を広げていくことによって国民の理解も深まるのではな いかと思う。 ・P.49の(障害者自立支援法等以外の施策の推進)のところの「ボランティ ア活動の推進」による地域との関係づくりが国民の理解や協力を得る上で も有効だと考える。  【全体的な意見】    ・P.2の(本報告について)のところで、施行後3年の見直しについて「措 置を講じるべき事項」「今後更に検討していくべき事項」 について取りま とめたものである、と示されているが、見直しを推進すべく「措置を講じ るべき事項」を多くしてほしい。  -------------------------------------------------------------------------- 〔参考URL〕【WAM NET】 http://www.wam.go.jp/ (「行政資料」→「審議会など」→「社会保障審議会」→「障害者部会」)