障害福祉部ニュース (障害福祉制度・施策関連情報) 2008年11月26日 19(通算209号) 発行:全国社会福祉協議会・障害福祉部 〒100-8980 東京都千代田区霞が関3-3-2 新霞が関ビル内 TEL:03-3581-6502  FAX:03-3581-2428 e-mail:z-shogai@shakyo.or.jp 1.第45回社会保障審議会障害者部会の開催  平成20年11月21日、第45回社会保障審議会障害者部会が開催され、「障害者自立支援法 の見直しに係る主な論点」の中の項目「(Y)報酬」と事務局(厚生労働省)が整理した 「これまでの議論の整理(案)」を論点に審議が進められた。(時間の関係上、今回は 「(Y)報酬」を中心に議論が行われた。)  冒頭、事務局から今回の論点に基づく資料説明があり、「平成20年障害福祉サービス等 経営実態調査」の結果について、収支差率の状況としては、全体がプラス6.1%、新体系 (障害者自立支援法に基づくサービス体系)がプラス5.4%、旧体系(障害者自立支援法 施行以前の施設体系)がプラス7.0%、障害児施設等がマイナス4.2%であったこと、事業 種ごとの収支差率の差が大きく、児童デイサービスなどについては、収支差率がマイナス であったことなどが報告された。  この調査結果とこれまでの審議会での議論を踏まえ、障害者自立支援給付費の報酬につ いて「障害福祉サービスの報酬については、@人材確保、A地域移行の促進、Bサービス の質の向上、Cサービス提供事業者の経営基盤の安定、D新体系への移行の促進、E中山 間地域などへの配慮等を基本的な視点としてはどうか。また、障害者自立支援法の課題に 対応するために報酬の改定が必要となる事項については、本障害者部会の意見を踏まえて 平成21年度の報酬改定を行うべきではないか。特に、現下の社会経済情勢の下では、福祉 人材の確保が最重要課題となっており、重点的に対応すべきではないか」等の論点(案) が示された。  その後、各委員との意見交換が行われた。委員の中から「平成21年4月に予定されてい る介護保険制度における介護報酬改定の議論と同様に、『介護従事者等の人材確保のため の介護従事者等の処遇改善に関する法律』等を踏まえた報酬全体の見直しと、人材の確保 に向けた施策の推進をお願いしたい。さらに、自民党・障害者福祉委員会での発言等を踏 まえ、サービスの質の向上と安定的な事業経営を可能とする自立支援給付の見直しを是非 ともお願いしたい」、「平成19年の単年度で経営の実態を考えるのは適切ではない。平成 15年度からの支援費、自立支援法が施行された平成18年度、19年度と経年の変化でみない と実態を適切に理解できないのではないか。収支差額(率)については、職員の退職があ っても人材確保難の中で、補充ができず、結果としてその分の差が生じてしまうこともあ る」、「調査結果自体に疑問がある。まず、平均で数値を出すというのは適切ではない。 個々の事業所の状況を見なければ本当の実態をつかむことにはならない」等の意見が出さ れた。  各委員からの調査結果に関する意見を受けて、潮谷部会長より「委員からの『データの 信憑性に疑問がある』、『規模別など詳細事項を分析してほしい』との意見を受け、調査 内容をクロス集計し、多面的に分析したデータを出すよう事務局にお願いしたい。委員に 調査票をお送りし、必要な分析提案をいただきたい」との発言があった。これを受けて、 事務局より「今後、調査した範囲内でデータを整理してお出ししたい。報酬改定にあたっ ては、この調査結果だけで判断するのではなく、関係者からの意見もふまえ、サービスの 質の向上、人材確保、経営基盤の安定等の観点から総合的に判断していきたい」との回答 があった。  その他、各委員からの主な意見は以下のとおり。  -------------------------------------------------------------------------- 第45回社会保障審議会障害者部会(11月21日)における各委員からの主な意見  (Y)報酬 ・報酬単価の改定について、来年4月からの介護報酬の改定と同様「介護従 事者等の人材確保のための介護従事者等の処遇改善に関する法律」を踏ま え、人材の確保に向けた施策の推進、給与水準の引き上げを可能とする報 酬の見直しをお願いしたい。 ・この調査で示されている19年度の単年度決算の状況だけでは、報酬改定の データとして不十分であり、本当の意味での施設経営の苦しさが反映され ていない。17年度の支援費(月払い)時点から、18年度の日払い時点と いった流れを見ないと実状は分からない。施設経営では赤字にすることは できないので、我々は様々な経営努力をしており、職員の常勤率や給与の 低下がこの調査の結果にも現れている。特に就労継続支援B型事業の職員 一人当たりの給与水準は他の事業に比べて著しく低い。単年度で見て収支 がプラスになっているから“経営できている”と評価するのではなく、本 当に苦しい状況をよく見ていただきたい。 ・実際に施設経営にあたっていない障害当事者の立場では、この調査結果に ついて問題点が分からない。厚生労働省の分析・評価はどうなのか。 ・17年度と18年度の収支状況を比較するとかなり悪くなっており、19年度に 向けて職員の給与の引き下げや非常勤化を進めてきた施設は多いと思う。 新体系ではさらに状況が悪く、このままでは移行できないというのが実状 であり、思い切った対応をする必要がある。特に中山間地やへき地におい て深刻な状況がある。 ・常勤率や給与水準について他の業種の状況はどうなっているのか。(厚生 労働省より「介護の実態調査の結果では、訪問系サービスで常勤率40.8% (障害分野:19.3%)、給与水準は年額約270万円(障害分野:約258万円) であり、介護と比較して障害は低い水準」との回答あり) ・ここ数年、施設では給与規程を改定し、職員の給与カットをしてきた実態 がある。そして新体系に移行するとさらに苦しい状況になっている。「新 体系に移行したところは苦しくならない」ようなアクセントをつけるべき ではないか。 ・措置から契約になり、常勤換算という考え方が出てきた頃から非常勤化に 歯止めがきかなくなってきたのではないか。悪しき市場原理の考え方が 入ってきているのではないかと思う。 ・指定基準において、一人は常勤、あとは非常勤でよいという職員配置基準 がある。多くの常勤が配置できるよう、そのための報酬単価の引上げをお 願いしたい。 ・常勤換算という考え方について、今の時代にすべて正社員というところは ないのではないか。サービスの低下と直接つながるような根拠もなく、常 勤換算がすべて悪いという結論にはならないのではないか。 ・重度訪問介護の事業所について、報酬単価を引き上げないとサービス基盤 の整備も進まない。セットで考えていただきたい。 ・この調査結果に対して疑問がある。データを平均で出すのは間違いであり、 個々の状況を見ないと実状は分からない。収支のプラスマイナスがどうい う分布なのかも含め、さらに詳細なデータを示していただきたい。 ・児童デイサービスの収支差率のマイナスが著しい。規模別・地域別・単独 事業と併設事業の状況等の分析をお願いしたい。 ・児童デイサービスの大幅な収支差率のマイナスは、措置から新体系への移 行に伴う報酬の入金時期のタイムラグも影響しているのではないか。こう したことからも17年度〜19年度の3年間における収支の流れを見ないと本 当の状況は分からない。 ・実態調査の結果について、説得力のあるデータとしていただきたい。 ・広い意味での所得保障がサービス提供ワーカー、事業主、障害者の三者に 必要であり、そのことがわが国の安心、安定に寄与し、社会の活性化につ ながる。そうした観点からの報酬見直しが不可欠である。  「これまでの議論の整理(案)」に基づく全体的な議論   【(T)相談支援】   (@地域における相談支援体制 Aケアマネジメントの在り方) ・「総合的な相談支援を行う体制」について、相談支援を行う拠点的な機関 の設置だけでなく、住民に身近なところで相談支援を行う相談支援事業者 の充実も重要な視点となる。ケアマネジメントについてもこのような拠点 的な機関が取り仕切って行うだけでなく、現場の相談員等が行っていく視 点も重要なのではないか。 ・施設・事業者のサービスの質の検証を考えるうえで、第三者評価、苦情解 決、そしてサービス管理責任者の質とそれが機能するようきちんと担保し てほしい。 ・「ケアマネジメントの在り方」について、相談支援事業者の財源となる サービス利用計画作成費の確保をいかに図るかが重要になる。 ・相談支援について、家族支援や当事者支援(ピアサポート)の活用が重要 であり、これまでのボランティアではなく、きちんとした制度化をお願い したい。   (B自立支援協議会の充実) ・地域において、自立支援協議会と同じような機能を持つ会議が多く設置さ れており、同じような機能・役割のところであれば、自立支援協議会に代 えることができるようにしたらいいのではないか。   【(U)地域における自立した生活のための支援】   (@地域での生活の支援) ・「地域移行における入所施設の役割」について、これまで精神生活訓練施 設では精神障害者がグループホームに移行するまでのワンクッションの役 割を担ってきた。今後も地域移行までのワンクッションとなる場を確保し ていく必要がある。   (A就労支援) ・精神障害者においては就労移行支援事業や就労継続支援A型事業の利用が 難しい人が多く、就労継続支援B型事業をステップにこれらの事業に移行 していくという視点が重要になる。就労継続支援B型事業の利用にあたり、 就労移行支援事業を経なくても医師の診断書等があれば利用できるように してほしい。 ・精神障害者の場合、障害当事者の立場では医師の診断書で安易に判断して ほしくないと思う。かえって引き止められる場合もあるのではないか。 ・「工賃引き上げの充実」について、一般就労より作業所の方がよい、とい うことになり、かえって利用者の可能性を潰してしまうことにはならない か。  --------------------------------------------------------------------------  次回は11月27日に開催され、「これまでの議論の整理(案)」を論点に議論が行われる 予定。 〔参考URL〕【WAM NET】 http://www.wam.go.jp/ (「行政資料」→「審議会など」→「社会保障審議会」→「障害者部会」) ******************************************************************************** 2.平成20年障害福祉サービス等経営実態調査結果について  平成20年11月20日、厚生労働省は「平成20年障害福祉サービス等経営実態調査結果」を 発表した。  今回の調査は、障害福祉サービス等を実施する事業所を対象に平成19年度における収支 状況、従事者数、給与等を調査したものであり、障害者自立支援法の全面施行(平成18年 10月)以降、初めての全国的な経営実態調査である。  収支の状況としては、全体で収支差が+4,469千円、収支差率が+6.1%、新体系(障害 者自立支援法に基づくサービス体系)で収支差が+1,689千円、収支差率+5.4%、旧体系 (障害者自立支援法施行以前の施設体系)で+9,190千円、収支差率が+7.0%、障害児施 設等で収支差が−3,964千円、収支差率が−4.2%であった。  また、従事者の状況としては、直接処遇職員の常勤率は、全体が81.5%、新体系が68.0 %、旧法が89.7%、障害児施設等が90.5%であった。  --------------------------------------------------------------------------   収支と従事者の状況 収支差 収支差率 有効回答数 常勤率 全体 4,469千円 6.1% 5,042 81.5% 新体系 1,689千円 5.4% 2,830 68.0% 旧体系 9,190千円 7.0% 1,962 89.7% 障害児施設等 −3,964千円 −4.2% 207 90.5%  -------------------------------------------------------------------------- ※詳細については、別添資料@を参照。 〔参考URL〕【厚生労働省】http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/11/h1120-3.html ******************************************************************************** 3.「安心と希望の介護ビジョン」について  平成20年11月20日、「安心」と「希望」のある超高齢社会を実現するための将来におけ るあるべき介護の姿を示す「第7回安心と希望の介護ビジョン会議」が開催され、「安心 と希望の介護ビジョン(案)」が示された。  この会議は厚生労働大臣直属の検討会として設置され、平成20年7月24日から7回にわ たり、@自助・公助・共助を組み合わせたケアの構築、A持続可能な介護保険、B介護を 担う介護従事者の人材確保、C医療サービスと介護サービスの適切な提供、D都市部や地 方等の地域ニーズに対応した地域ケア構築のための仕組みづくりについて検討が進められ てきた。  ビジョン(案)では、@高齢者自らが安心と希望の地域づくりに貢献できる環境づくり、 A高齢者が住み慣れた自宅や地域で住み続けるための介護の質の向上、B介護従事者にと っての安心と希望の実現の3つが掲げられた。  前回の会議(11月12日)の中で、厚生労働省がたたき台として示した、一定の医療行為 が可能とされた「療養介護士(仮称)」については、各委員から賛否さまざまな意見が出 されたことを受け、今回のビジョン(案)では記載が見送られた。その代わり、「介護従 事者が質の高い総合的なケアを提供できるようにするため、将来的には、医師や看護師と の連携の下に、介護の現場で必要な医療行為を行うことができるようにすることを含め、 資格のあり方の検討」、「当面、医療的なケアのニーズが高まっている施設において、必 要な知識・技術に関する研修を受けた介護従事者が、医師や看護師との連携の下に、経管 栄養や喀痰吸引を安全性が確保される範囲内で行うことができる仕組みの整備」などに表 現が改められた。 〔参考URL〕【WAM NET】 http://www.wam.go.jp/ (「行政資料」→「介護保険」→「介護全般」→「検討会等」) ******************************************************************************** 4.平成20年6月1日現在の障害者の雇用状況について  平成20年11月20日、厚生労働省(障害者雇用対策課)が「平成20年6月1日現在の障害 者の雇用状況について」を発表した。  これによると、国の機関では、全ての期間で法定雇用率を達成し、民間企業(56人以上 規模)における全体の実雇用率は1.59%と対前年比で0.04ポイント上昇し、法定雇用率を 達成している企業の割合も44.9%と対前年比で1.1ポイント上昇するなど公的機関、民間 企業の障害者雇用が着実に進展している。  ただし、都道府県・市町村の機関では法定雇用率の未達成のところがあり、特に都道府 県教育委員会においては、達成率が8.5%であり、また民間企業においても、企業規模別 で見ると中小企業の実雇用率は引き続き低い水準となっている。  詳細は下記ホームページを参照。 〔参考URL〕【厚生労働省】http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/11/h1120-1.html ******************************************************************************** 5.「今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会 中間まとめ」について  平成20年11月20日、4月から14回にわたって集中的な検討が行われた「今後の精神保健 医療福祉のあり方等に関する検討会」が中間的な検討結果をとりまとめた。  この検討会では、平成16年9月に策定された「精神保健医療福祉の改革ビジョン」(以 下「ビジョン」という。)における「入院医療中心から地域生活中心へ」という基本的方 策を更に推し進めるという共通認識の下、精神保健医療福祉施策に関する抜本的見直しの ためのビジョンの後期5か年(平成21年9月以降)の重点施策群の策定に向けて検討を開 始し、9月に、これまでの議論を踏まえた「これまでの議論の整理と今後の検討の方向性 (論点整理)」において論点のとりまとめた。  今回の中間まとめは、上記論点整理に基づき、精神障害者の地域生活への移行及び地域 生活の支援に関連する事項について、検討を進めてきた内容を踏まえ、精神障害者の地域 生活への移行及び地域生活の支援に関し、障害者自立支援法の見直し等に向けた意見をと りまとめたものである。中間まとめの基本的な考え方は以下のとおり。  -------------------------------------------------------------------------- 今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会(中間まとめ)   基本的な考え方  障害者自立支援法の見直し等に当たり、精神障害者の地域生活への移行及び地 域生活の支援については、精神障害者の特性を十分に踏まえて、以下を基本的な 考え方とすべきである。   なお、精神障害者の地域生活への移行及び地域生活の支援に当たっては、病院 等から地域生活への移行を目指す者だけではなく、家族と同居している者への支 援についても推進すべきである。 @ 障害者自立支援法に基づくものをはじめとする相談支援については、日常の 継続的な支援や緊急時の支援を通じて、精神障害者が安心して地域生活を営 むことを支えるとともに、地域生活を営む精神障害者に対する様々な支援を 結び付け円滑に利用できるようにする重要な機能であり、その充実強化を今 後の施策の中核として位置付ける。 A 地域における相談支援が十分に機能するためにも、多様な支援を必要とする 精神障害者に対してケアマネジメントを行う機能の充実を図る。   あわせて、相談支援の中核を担うべき地域自立支援協議会についてもその機 能の充実を図る。その際、地域自立支援協議会への当事者の参画を促進する。 B 精神障害者の地域生活への移行及び地域生活の支援については、障害者自立 支援法に基づく障害福祉サービスと保健医療サービスとの密接な連携の下で 行われることが不可欠であり、これらのサービスの複合的な提供を含めてそ の体制の一層の充実を図る。   また、住まいの場については、精神障害者が地域生活を営むに当たり最も重 要な基盤の1つであることを踏まえ、国及び地方公共団体は、その確保のた めに重点的な取組を行う。  -------------------------------------------------------------------------- ※詳細については、別添資料Aを参照。 〔参考URL〕【厚生労働省】http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/11/s1120-7.html 同封資料19(通算)209号 @ 「平成20年障害福祉サービス等経営実態調査結果」 A 「今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会 中間まとめ」について