障害福祉部ニュース (障害福祉制度・施策関連情報) 2008年11月5日 16(通算206号) 発行:全国社会福祉協議会・障害福祉部 〒100-8980 東京都千代田区霞が関3-3-2 新霞が関ビル内 TEL:03-3581-6502  FAX:03-3581-2428 e-mail:z-shogai@shakyo.or.jp 1.第42回社会保障審議会障害者部会の開催  平成20年10月31日、第42回社会保障審議会障害者部会が開催され、「(U)地域におけ る自立した生活のための支援」のB所得保障、「(W)障害者の範囲」、「(X)利用者 負担」を論点に審議が進められた。  冒頭、事務局(厚生労働省)から今回の論点に基づく資料説明があり、所得保障につい ては、@年金、手当など現行制度の在り方、A住宅費など地域移行推進のための新たな課 題への対応の2つの基本的な視点が示された。また、障害者の範囲については、@障害者 の定義、A手帳制度等に分けて論点を整理し、利用者負担については、@利用者負担につ いての原則的な考え方、A平成21年4月以降における利用者負担の在り方、B合算制度等 利用者負担に関する諸制度の在り方について、各論点が説明された。  その後、各委員との意見交換が行われた。委員の中から、「障害者の自立を支えるため には所得の確保が大前提である。今回の資料には無年金者の問題が書かれておらず、これ らの人のことも含めて検討すべきである」、「老齢基礎年金と障害基礎年金2級が同額で あり、両方を引き上げた場合は約4.5兆円かかると説明されたが、障害基礎年金の部分だ けを切り離して議論することはできないのか。高齢者と障害者とでは生活を支える意味合 いが違うと思う。障害者の所得保障という観点から新たな年金を考えるべきではないの か」、「所得保障がない中で利用者負担が発生することに問題の原点があるのではないか。 障害者が生きるベースとなる支援に利用料はそぐわないという本質論に立ち返る必要があ る。負担軽減策があっても預貯金等によって対象とならない人も残っており、その預貯金 は親亡き後のために蓄えられたものである。加算に対する利用者負担もおかしい。原点に 戻って検討いただきたい」、「利用者負担の軽減措置は21年度以降も継続していただきた い」、「自立支援法は三障害対象であり、いわば限定的に決められているが、その狭間に いる方々の生活の困難性も理解してほしい。将来的にはそのような狭間にいる人が現れな いよう、どのような障害であれ、すべての障害困難のある人が対象となるような制度にす べきである」などの意見が出された。  最後に、委員からの「これまでの論点ごとの個々の議論による矛盾も出てきている。整 合性をとったとりまとめを行い、その上で総合的に議論をするべき」との意見に対し、潮 谷部会長より「その意見には同感であり、総合的なとりまとめを出してもらい、全体的な 議論と方向性の確認ができるよう事務局に指示している」との回答があった。  その他、各委員からの主な意見は以下のとおり。  -------------------------------------------------------------------------- 第42回社会保障審議会障害者部会(10月31日)における各委員からの主な意見   【所得保障と利用者負担】    ・現行所得保障制度の問題点を把握した資料が示されていない。    ・支援費制度における利用者負担率は7%、自立支援給付における緊急措置後     は2.8%となっているが、食費・光熱水費等を入れるとどうなるか。(厚生 労働省より10%と回答あり)    ・精神障害者は無年金者が多いという実態がある。所得がなければ生活が成り     立たず、自立することはできない。例えば就職したが挫折し、再びトライす     る人の生活を支えていくための所得保障が必要だと思う。    ・障害者の自立を支えるためには所得の確保が大前提である。今回の資料には     無年金者の問題が書かれておらず、これらの人のことも含めて検討すべきで     ある。    ・精神障害者の場合、医師の診断書を書いても条件に合わず、年金が貰えない     ことが多いことを考えていただきたい。    ・自立支援法と自立支援医療との利用者負担の合算をお願いしたい。自立支援     医療と一般医療が合算されているので難しいとの説明だったが、自立支援医     療の部分のみを切り分けて合算することはできないのか。    ・老齢基礎年金と障害基礎年金2級が同額であり、両方を引き上げた場合は約     4.5兆円かかると説明されたが、障害基礎年金の部分だけを切り離して議論す     ることはできないのか。高齢者と障害者とでは生活を支える意味合いが違う     と思う。障害者の所得保障という観点から新たな年金を考えるべきではない     のか。    ・障害者の稼得能力は少ない。年金にこだわらず、手当の形で上乗せすること     はできないか。    ・所得保障がない中で利用者負担が発生することに問題の原点があるのではな     いか。障害者が生きるベースとなる支援に利用料はそぐわないという本質論     に立ち返る必要がある。負担軽減策があっても預貯金等によって対象となら     ない人も残っており、その預貯金は親亡き後のために蓄えられたものである。     加算に対する利用者負担もおかしい。原点に戻って検討いただきたい。    ・就労による稼得を望んでいる障害者が75.4%と示され、働いて収入を得るこ     とを強調した資料となっているが、働くことの難しい人への所得保障もきち     んとお願いしたい。中国残留邦人等に対する支援では基礎年金に加えて約8     万円の生活支援給付が現実に行われている。こうした形での所得保障をお願     いしたい。    ・知的障害のある人たちの所得保障が不十分であり、与党PT報告書で示され     た障害基礎年金の引き上げ、住宅手当の創設、また特別障害者手当の対象と     なる在宅の障害者の拡大をお願いしたい。親が子どものためにしておいた貯     金や資産、心身障害者扶養共済年金等は利用者負担算定の際に控除していた     だきたい。このままでは親が子どもにお金を残すことはできない。    ・利用者負担の軽減措置は21年度以降も継続していただきたい。    ・障害厚生年金には3級があり、企業等で働いていて精神障害になった人は比     較的受給しやすいが、国民年金(障害基礎年金)には3級がなく、国民年金     の人が中途で精神障害になった場合に無年金となるケースが多い。障害基礎     年金にも3級を作っていただきたい。    ・地域生活での支援という意味で、住宅費への対応は非常に大切なことだと思     う。病院から地域に出る場合、家族から自立する場合においても、住宅費へ     の対応は重要である。    ・障害者権利条約の第28条の「相当な生活水準及び社会的な保障」では「支援     にアクセスする措置をとる」としており、利用者負担との関係性を検討する     必要がある。    ・今の利用者負担には矛盾があることを捉えなければならない。工賃より高い     利用者負担などの矛盾もあり、このままでよしとしていいのか。軽減措置で     定率負担は実質崩れているにもかかわらず、定率負担に固執する理由は何な     のか。応能負担にすれば矛盾は解決するのではないか。    ・地域によって生活にかかる費用は異なる。また働いている人の中で、年金が     削られるのでボーナスはいらないという人もいる。一律に支給するのではな     く、必要なものを選択できるという考え方はできないものか。    ・年金の引き上げは今の状況を考えると非常に厳しいのではないか。またさま     ざまな制約がある中で、我々としてもどのように意見を出していったらいい     のだろうか。    ・利用者負担の問題は、支援費の時に費用負担していない者の比率が95%で     あったことにその実態が現れている。定率負担の特徴として「利用者と事業     者が対等な関係に立つことができる」とあるが、利用者が実感としてそのこ     とを感じているとは思えない。    ・入所施設の手元金について、所得区分ごとにきちんと残るよう、もう少しき     め細やかに精査していただきたい。    ・障害児の利用者負担額について、低所得者の負担が高くなっているという実     態もある。児童は無料とすべき。   【障害者の範囲】    ・自立支援法は三障害対象であり、いわば限定的に決められているが、その狭     間にいる方々の生活の困難性も理解してほしい。将来的にはそのような狭間     にいる人が現れないよう、どのような障害であれ、すべての障害困難のある     人が対象となるような制度にすべきである。    ・発達障害について、現行の障害者自立支援法の中で明確に位置づけられてい     ない。その現状によって十分なサービスが受けられていない。自閉症、学習     障害、ADHD等の人も対象となるように位置づけてほしい。    ・精神保健福祉法が精神疾患を広くカバーする法律と捉えた上で、現行の自立     支援法の本則の中で、発達障害が対象であることを明文化してほしい。    ・自立支援法の障害者の定義の原則的な部分は、権利条約とはかなりの違いが     ある。障害関係の各個別法においてそもそもの障害の定義が違っているが、     障害とは機能障害ゆえに社会とのバリアとの関係で社会参加に制約が生じて     いることといわれており、社会参加上の制約状態にあるということをどのよ     うに判断していくのかということについて議論をしないと矛盾を抱えたまま     の制度となってしまう。    ・知的障害の人は全人口の2%いると世界的に言われている。療育手帳は申請     主義であり、かつて親は申請をしないという傾向もあったが、現在は変わっ     てきている。広くいろいろなサービスを受けられるようになればいいと考え     る。    ・ICFの考えにもとづいて、社会モデル的にどうあるべきかの議論に入るべ     き。障害者は継続的に相当な制限を受ける者とされているが、断続的に介護     を要する人もいる。そうした難病の方々についても、手帳制度だけに拠るの     でなく、医師の意見書や判断など幅広い考え方で障害者自立支援法の中で     サービスを受けられるようにすべきである。    ・自立支援法から、障害者の定義をなくすか、または障害者権利条約のような     広い意味で定義し直すよう見直すべきである。今のように定義の上にさらに     障害程度区分があるというのは二重基準ではないか。    ・時間はかかるが、支援の必要性とは何か、それを図る指標について検討して     いく必要がある。自立支援法は各法の定義を引用してきたものであるが、各     法も立法から長年を経ている。旧態化した法律の中から定義だけを引用する     ことはいかがなものか。抜本的に見直すならば、大胆に改善をしないと従来     同様に対象規定の解釈で問題が起こり、同じ議論の繰り返しになる。    ・知的障害を定義する規定がないというのは問題。資料には54万7千人とあるが、     以前出された際の35万人から段階的に人数が増えているのは、こうした定義     が安定していないからである。定義を決めるのは難しいが、さまざまな角度     からの定義の検討をお願いしたい。    ・権利条約第1条の定義を自立支援法がめざす支援の範囲として考えていくべき     である。真に支援を必要とする人が支援を受けられるという方向性を持って     ほしい。    ・これまでの論点ごとの個々の議論による矛盾も出てきている。今後は全体を     考え、整合性をもって議論を進めていく必要があるのではないか。  --------------------------------------------------------------------------    次回は11月6日に開催され、サービス体系、障害程度区分、地域生活支援事業等につい て議論が行われる予定。        〔参考URL〕【WAM NET】 http://www.wam.go.jp/      (「行政資料」→「審議会など」→「社会保障審議会」→「障害者部会」) ********************************************************************************     2.障害者自立支援対策臨時特例交付金基金の延長・積増し方針を発表  政府は、平成20年10月30日、「新たな経済対策に関する政府・与党会議、経済対策閣僚 会議合同会議」として『生活対策』を示した。これは、世界の金融経済情勢から日本の国 民生活と経済を守ることを目的とし、セーフティネットを強化して、緊急の備えを万全に することをめざすものである。  障害福祉関連としては、「障害者支援の拡充」の項目の中で「自立支援法円滑施行・福 祉人材確保対策等」として、平成20年度までとしていた障害者自立支援対策臨時特例交付 金に基づく基金の延長・積増しによる事業所支援および新法移行支援、そして、福祉・人 材確保対策等が謳われたことである。今後、詳細がわかり次第、お知らせする。  --------------------------------------------------------------------------                 「生活対策」の規模                                   単位:兆円                           国費      事業費   T. 生活者の暮らしの安心           2.8程度 3.0程度 1. 家計緊急支援対策 2.0程度 2.0程度 2. 雇用セーフティネット強化対策 0.3程度 0.3程度 3. 生活安心確保対策 0.5程度 0.7程度 U. 金融・経済の安定強化 0.6程度 21.9程度 4. 金融資本市場安定対策 ― ― 5. 中小・小規模企業等支援対策 0.5程度 21.8程度 6. 成長力強化対策 0.1程度 0.1程度 V. 地域の底力の発揮 1.6程度 2.0程度 7. 地域活性化対策 0.8程度 1.0程度 8. 住宅投資・防災強化対策 0.2程度 0.4程度 9. 地方公共団体支援策 0.6程度 0.6程度         合  計 5.0程度 26.9程度                (注)   (注1) 財政投融資の追加1.5兆円程度による事業費の増を含む。   (注2) 税制措置については、21年度税制改正において具体化。  -------------------------------------------------------------------------- 「生活対策」について(概要)※抜粋 平成20年10月30日         新たな経済対策に関する政府・与党会議、経済対策閣僚会議合同会議 第2章 具体的対策 <第1の重点分野>生活者の暮らしの安心   景気後退下での生活者の不安にきめ細かく対処するため、家計への緊急支援と して総額2兆円を限度として生活支援定額給付金(仮称)を実施するとともに、非 正規労働者や中小企業・地域を中心に60万人分の雇用下支え強化を行う。また、 消費者政策を抜本的に強化するとともに、介護人材等の10万人増強、出産・子育 て支援や障害者・医療・年金対策の推進など、国民の生活の安全・安心を確保す るための取り組みを推進する。 3 生活安全確保対策 <具体的施策> ○介護従事者の処遇改善と人材確保等 ・介護報酬改定による介護従事者の処遇改善    平成21年度の介護報酬改定(プラス3.0%)等により介護従事者の処遇改善を 図ることとしつつ、それに伴う介護保険料の急激な上昇を抑制等 ○障害者支援の拡充 ・自立支援法円滑施行・福祉人材確保対策等   障害者自立支援対策臨時特例交付金に基づく基金の延長・積増しによる事業所 支援、新法移行支援、福祉・人材確保対策等 ・障害者雇用の促進   障害者雇用の経験のない中小企業に対する奨励金の創設、障害者雇用の特例子 会社等の設立促進助成金の創設 第3章 財源 <経済成長と財政健全化の両立> 2 持続可能な社会保障構築とその安定財源確保に向けた中期プログラムの策定 ○以下を「基本骨格」とする中期プログラムを、年末の税制改正においてとりま とめる。 (2)社会保障安定財源の確保   社会保障制度については、その機能強化と効率化を図る一方、基礎年金国庫負担 割合の2分の1への引き上げに要する財源をはじめ、国・地方を通じて持続可能な 社会保障制度とするために安定した財源を確保する必要がある。このため、経済 状況の好転後に、年金、医療、介護等の社会保障給付や少子化対策に要する費用 の見通しを踏まえつつ、給付に見合った負担という視点及びこれらの費用をあら ゆる世代が広く公平に分かち合う観点から、消費税を含む税制抜本改革を速やか に開始し、時々の経済状況をにらみつつ、2010年代半ばまでに段階的に実行する。 その際、国民の理解を深めるため、現在行われている歳出の無駄排除と行政改革 を引き続き行うとともに、社会保障給付とその他の予算とは厳密な区分経理を図 る。 (3)税制抜本改革の全体像   社会保障の安定財源確保をはじめ、我が国の成長力の強化、社会におけるさまざ まな格差の是正など種々の課題に総合的かつ計画的に対応するため、本年末に、 個人、法人の所得課税、資産課税、消費課税の各税目の改革の基本的方向性を明 らかにした「税制抜本改革の全体像」をわかりやすく示し、これに基づき抜本改 革を断行する。  -------------------------------------------------------------------------- 〔参考URL〕【首相官邸】http://www.kantei.go.jp/jp/keizai/ ******************************************************************************** 3.研究会・検討会等の動向 「今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会」  平成20年10月29日、「第12回今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会」が開 催された。今回の検討会では、@就労支援・社会適応訓練事業、A精神保健指定医の確保、 B「精神保健福祉士の養成の在り方等に関する検討会」中間報告について検討が進められ た。  まず、就労支援・社会適応訓練事業については、就労や日中活動は生活のための収入を 得ることだけでなく、社会の中で役割を持ち、生きがいを見つけ、自己実現を図ることに 資するものであり、地域生活への移行を進めるにあたっての重要な要素であるという認識 のもと、@就労系の障害福祉サービスと雇用施策等との連携の強化、A障害者就業・生活 支援センターの充実、B社会適応訓練事業を論点に検討が進められた。  次に、精神保健指定医の確保については、措置診療を含め精神科救急医療における精神 保健指定医の確保に困難していることを踏まえ、確保のための具体的な方策について検討 が行われた。  最後に、平成20年10月21日に取りまとめられた「精神保健福祉士の養成の在り方等に関 する検討会 中間報告書」の説明が行われ、求められる精神保健福祉士の役割や必要とな る技術、求められる役割を踏まえた今後の対応が示された。  次回の検討会は11月7日に開催され、@相談体制における行政機関の役割、A障害者自 立支援法の見直し等について検討される予定。 〔参考URL〕【厚生労働省】 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/10/s1029-9.html